あの夏の向こう側--君と見た全国大会--






ーーバンッバンッ!



「チッ!」


「ちょっと、舌打ちなんかしないでよ。」


「お前が意地悪すぎなんだよっ!」




体育館に入れば、中では男子バスケットボール部が活動してる。
県大会の上位入賞や全国常連になりつつあるこの男子バスケ部。


今さらながら私は男子バスケ部マネージャーの杠琴梨(ことり)。
もちろんさっきの鈴禾くんもバスケ部員の1人。


……だけど、問題が1つ。



「あーあ、結局負けちゃった。」


「…ったく、もうお前と1on1したくねぇ。」


「そんなこと言わないでよ。宗。」



それは、部員が2人しかきてないということ。

そもそも、この学校の男子バスケ部が強かったのもつい5年前までの話。それ以降は強くても県ベスト4が限界。
全国の舞台にはもう5年近く立ってない。


それでも今年の夏。
3年生が引退するまでは、ギリギリだけど1、2年生合わせて5人いた。

だけど、引退した今じゃ、2年生の2人だけしか部活に来なくなって、人数が全然足りない。



「琴、おかえり。戻ってきたなら声かけてくれれば良かったのに。」


「ダメだよ。2人とも楽しそうだったし。閖志くんは今日も勝てなかったみたいだけどね。」


「それは言わないで。宗には本当、何回やっても勝てないから。」




そう言って笑うのは、部長の榊原閖志(ゆりし)くん。
身長172センチくらいの黒髪の正統派イケメン。バスケをやる姿も爽やかなモテ男。