「遅れてごめんね!あ、宗ももう来てたんだ。俺が一番最後だね。」
宗介くんが基礎練を終えて少し休んでる時、閖志くんが戻ってきた。
走ってきたのか、その額には少し汗が浮かんでる。
「3人しかいねーのに、最後もなにもねーだろ。」
「そんなこと言わないでよ。宗は次何するの?」
「とりあえずフリースローすっかなー
お前は走って基礎練からだろ。」
「うん。じゃ琴行ってくるね」
「あっうん!」
朝のことなんてまるでなかったかのように、いつもの爽やかさを取り戻したらしい閖志くんは、ニコニコしたまま外へ出ていった。
「なんかあったのか?あいつ」
「うーん……分かんない。」
まぁいっか。と言って宗介くんはボール籠を持ってフリースローライン辺りに適当に立つ。
フリースローは何があっても外すな。
頭の中にこだました低い男の声。
問答無用で一点ずつの差がでるフリースローは何がなんでも外してはならない。
中学の時に叩き込まれた理念。
「そういやさ、赤夜ってあれだろ?清向の中学出身なんだろ?なんでもっと早く教えてくんなかったんだろうな。」
「赤夜くんには赤夜くんの考えがあるんだよ。きっと。」
「ふーん。」
他人事のように言うけれど、宗介くんだってここにいることだって変なんだよ。ってでかかった言葉を呑み込む。
いくつも推薦が来てて、そこに清向の名前だってあったのに、宗介くんは全部蹴って一般でここにきた。
宗介くんは自分で思ってるよりずっと、自分のことを過小評価し過ぎなんだ。
だから、いつも一番辛い役目を背負ってしまう。
私はもうそんな宗介くんは見たくない。
「宗介くん、もうフリースローはいいんじゃない?外さないでしょ」
「なにそのプレッシャー。止めろよ…あっ」
「集中力ないなー」
「だから、そうゆうの!」
「はははっ!宗介くん、次スリーから」
「はいはい。」
だから私は、今こうやって宗介くんと笑い合える時間が本当に嬉しいし、大切にしていたいって思ったんだ。