あの夏の向こう側--君と見た全国大会--






「お前はもう、選手じゃないだろ?」



「うん、そうだね……」



そうだよ、私はもうプレーヤーじゃない。


宗介くんを見守る、部員を見守るマネージャー。



「俺はさ、バスケやってて泣きたいとか辛いとか思ったことないけど、そんなの人それぞれじゃん。


……琴梨、お前は十分頑張ったんじゃねぇの?いつだって前向いてたろ?それだけじゃダメなのか?

過去の事で今も辛い思いする必要なんてないだろ。少なくとも俺は、そう思うよ。」




「そう、すけ…くん………」



真剣な顔の宗介くんは手に持ったボールを放った。

スリーよりも遠い位置にいるのに、何にも邪魔されずにネットだけを揺らしたボール。
それを見て宗介くんは満足そうに笑う。



あの時本当に辛かったのは、宗介くんの方。
それでも宗介くんは前へ進んでいく。



「俺がバスケ、してんだろ?


安心しろよ、マネージャー!」



「……そう、だよね。」





でも、本当は違うんだよ。


私がバスケを止めた理由も、バスケ部のマネージャーになった理由も。

本当は頑張ったなんて言って貰えることなんて1つも無いんだ。



純粋にバスケが好き。なんてもう言えないの。









ごめんね、宗介くん。