赤夜くんにも、また何か、あるのか……
「俺さ、琴には言ってなかったよね。」
「何を?」
「赤夜は、清向学園の中等部の卒業生なんだよね。」
「え?」
せい、こう…学園?あの有名な?
なら、この学校に来なくたってそもまま進学すれば……
「俺ね、思うんだ。
赤夜もきっとバスケが大好きなんだって。
だからこそ。
負けることが、勝つことが、怖くなったんじゃないかなって。
あいつ、中等部の頃は“天才”なんて呼ばれてたみたいだし。」
“天才”なんて言葉は時に簡単に人を傷つける。
そのプレッシャーに押し潰された人はきっと、ごまんといると思う。
その中でどれくらい、自分でいられるか。
それが大切なんだって。
私がそれを知ったのは、身近な人がそうやって堕ちていったのを見たからだ。
「それでも、赤夜くんは来たんだよね。」
「うん。そうだね。」
「っつか、早くバスケしよーぜ!」
待ちきれないのか、冷静なのか、宗介くんは外に飛び出していった。
体力はバスケの基礎。
40分間走りきるだけの体力がやっぱり必要だから。
「ちょっ、置いてくなよ!」
そう言って閖志くんもその後を追うから。
抱えたままのタオルを持って、私も外にでた。

