あの夏の向こう側--君と見た全国大会--







「ここまで送ればいいよな。

じゃ、俺はこっちだから。」


「あ、うん。ありがと。」



角を曲がればすぐ家。のとこまで宗介くんが送ってくれた。
宗介くんの家は少し前に通り過ぎたところだから申し訳なくなるけれど。



「じゃあな、また明日。」


「うん!また明日ね!宗介くん。」





振り返ることなく手をヒラヒラと振る宗介くん。私は宗介くんが見えなくなるまで見てから家に入った。











「ただいまー」


「おかえり琴梨。なに?珍しく機嫌いいじゃない。」


「そう?そんなことないよ。」


「ならいいけど。」




ニコニコしながら作った料理をテーブルに並べるお母さん。

多分私の頬が緩んでることに気づいた上で聞いてるんだろうけど、私は知らないフリをする。



「あ、でもさ………」


「なぁに?」


「宗介くんって、あんなに大きかったっけ?」


「宗介くん?そんなの私には分からないわよ。」



なんとなくした質問。

今日、隣を歩いてた宗介くんは思いの外大きかった。
小学生の頃より何十センチも大きくなった身長。
捕まれた手も宗介くんの手の方が倍以上大きかった。


なんだか、私の知ってる宗介くんじゃないみたいだった…………




相変わらずお母さんはニコニコしてる。



「まぁでも。宗介くんも男の子だからね。
なぁに、琴梨。寂しいの?」


「寂しい……?」


「そう。宗介くんが琴梨の知らないうちに成長してて。」




………寂しい、のかな……?




「うん。そうかも。」


「あら、珍しい。琴梨が認めるなんて。」


「……そう?」



だけど、思うんだ。

今こんなに嬉しいのも、今何故か悲しいのも、きっとお母さんの言う通り寂しいからなんだって。

あいてた距離が遠すぎて、久しぶりの宗介くんの隣は楽しくて。だけど、その分距離を感じて。
だからきっと寂しかった。




「まっ、とりあえずご飯食べましょ。話はそのあと。」


「うん。」








本当はもっと大切なことがあったのに。

それに気づかない私は本当に馬鹿で。


だから、気づかないうちに遠くに行った幼なじみが本当は何も変わってないなんて気づかなかった。