「ハイ、チーズ!!!」

私の仕事は皆の思い出を写真に残すこと。

「ありがと、はるちゃん!!!」
「いえいえ。写真を撮ることが私の仕事なので。」

私は2年3組、蓮野波 遙。写真部である私は、行事ごとになると至るところからお呼び出しがかかる。写真を撮る練習にもなるし、今まで話したことのなかった人とも交流できるから楽しい。何より…

「はるちゃん、ありがと!!!」
「写真撮ってくれて、ありがと!!!」

写真を撮ると必ず、"ありがとう"と言ってもらえるのが何よりも嬉しい。

文化祭も後夜祭に移り、皆楽しげに踊っている。私は皆より離れたところからその光景を眺めていた。

「今日もたくさん撮ったなぁ。」

カメラのデータを確認する。皆笑顔でこちらに視線を向けている。三年生が最後だからと、写真を撮って撮ってと言ったので今年は余計にデータ量が多い。

「あっ!!!和也先輩顔ヤバイwww 栞先輩と佳奈先輩のメイド服可愛いなぁ。ていうか、うちのクラスめっちゃ忙しそうだったなぁ…」

写真を見て一人、今日の出来事を思い返す。先輩と食べたチョコバナナ、皆で踊ったステージパフォーマンス、生徒会長のズッコケ事件、3年教室での異臭事件、ほんとに怖かったリアルお化け屋敷。ほんとにほんとに、楽しかった文化祭。でも、でも…!!!

「記憶…無くなっちゃうんだもんな。何でだろ、楽しかったのに…何で!!!」