『ザワザワ‥』

木々のしげりが、夏の夜風にゆらぐ。

強かった日差しはしずみ、涼しくなった空気が気持ちいい。

サイドで高い位置に髪をまとめた少女は、前に乗る少年の腰を持ち、夜空と同じ色の浴衣が自転車のタイヤに挟まらないようにそっと裾を手にとった。

やっとのことで海岸まで上り詰めた2人乗り自転車は、爆音と共に動きを止めた。

少女が、歓声を上げて上を見上げる。

そして、少年に笑いかける。

少年は、少女を、
少年は、見て、
少年は、屈託のない表情で、

にっこりと、笑った。