スプリット人格。



「え…?」

「俺らは一足先に特訓兵へと所属を決めていたんだが、少しばかり時間がかかってしまってな。決めるのにも、頭を使っちまって。それで、まぁこういう結果よ。」

顎に指をあて、何かを考える仕草を見せるアーロン。

「此処にいる人たちは、ほとんど身内が殺され、それの報いで特訓兵に入ろうとしている。でも、そう甘くはいかないと思う。」

甘い?甘いって言葉はこの空間にはないぞ?

「当たり前だ…。悲しみと憎しみだけじゃ…絶対に生き残れねえぞ…。」

自分の歯を食いしばり、俺はベッドに横になる。
身体の力が、一気に抜ける。

「レオ、寝るの?」

「あぁ…、全てを夢にしたいよ…。」

泣かないと決めた。
感情を殺した。

荷車に乗っている時も、なんだかんだで涙が出てしまった。
泣き虫な俺を優しく撫でるミナトの隣で。
ルイも涙を流していた。何を想って涙しているのかは、わからなかったが。

ミナトは強い。
彼奴は、とても強い。

「ハァ…。」

自分の感情を殺す。我慢とか、そういうのじゃなくて、
俺の中から感情を消すんだ。

できるか?


無理だよな…。

希望なんて、見えやしねえ。勇気なんて、そんなん芽生えない。

あぁ、わからねえ事だらけで、
もう、疲れちまったよ…。