「何であんなにみんな怯えているの?」

オレンジ色の髪を靡かせて、私の方へ顔を向ける一人の青年。
私より何個か上の男だ。

「今の子供はスプリットの力を知らないのか?」

整った顔立ちで、私を見つめるこの青年。
目の色は青く澄んでいて、とても純粋そうな印象だった。

「スプリット自体は当然知ってます。でも何であんなに警戒をして?」

「俺らガタール民族に恨みを持ってる奴らが、スプリット法を使って俺らの街に進撃してきたらどうなると思う?スプリットというのは、理性も何も持っていない奴らだ。人間を喰う事も殺す事も少なくないって、習わなかったのか?」

街の人々の怯えた声と余裕を持った声が、私の耳に次々と入る。

「…習いました。」

「充分に警戒をしろ。近いうちに避難警報がでる。」

よく見ると、その青年は妙な格好だった。
両手に黒い手袋をはめて、頭にはバンダナ。
服装は、制服のような格好。腰には数個のボトルがぶら下げてあった。

「あなたは…?」

青年は唇に指を当て、「兵士だよ」と、私に告げた。