「待ちなさい!朝ごはん食べなきゃ。もうすぐ受験生よ?二人とも。」
エプロン姿の母ちゃんが、俺の腕を引っ張る。
「私は食べてきたので。」
「俺もいらねえ。」
腕を振り払って、
そそくさとミナトの腕を引っ張りながら玄関へ向かう。
振り返ると、悲しい顔をして「そっか、」と微笑む母ちゃん。
胸のあたりがチクッとしたが、無視して家を出た。
「もっとお母さん大切にしなよ。」
「母ちゃん俺に気遣いすぎてイライラすんだよ。」
そう言ったらミナトに思い切りビンタされた。
ミナトの親は事故で死んでいて、今は確か祖母と二人暮らし。
たまに俺の家に泊まる時があるが、ほぼ飯は自分の家だ。
…本当に食ってきてるかはわからねえが。
