また数週間が過ぎ、夏も暮れにさしかかっていた。


とはいえ『残暑』という言葉通りで、相変わらずジメジメとした暑さは続いていた。




もうその頃には夏の初め、あの声を聞いた不思議な体験は自分の記憶の奥深くにしまわれていた。



そんな『普通』の夜を幾度も過ごしたある日。



それはやって来た。