「勿体ないな」

「何が?ブランド物で、新品だから、結構いい金になるのよ?バッグとか靴とか」

「……アンタって、したたかだよな。さすが貯金が趣味なだけある」



親からの贈り物は大事にしろよ。

なんて、悪魔らしからぬ事を言う悪魔に、面倒臭くなった私は会話を切り上げた。



「ねえ、貴方、服選びに来たんでしょ?無駄話しないで早く選んで帰りましょ」

「えー。折角着たんだから、楽しもうぜー?」

「無理。そんなこと言ってるなら、私、先帰るわよ」

「……わかったよ。選ぶよ」



悪魔は渋々、店を探すべくマップを開く。



「あ、ここ。安藤のヤツが俺に似合うはずって、薦めてきた店だ」

「じゃあ。そこ行きましょ」

「……アンタ、安藤が誰かとか気にならねえの?」

「バイト先の人でしょ?聞くまでもないじゃない」

「女だぜ」

「それが?私が、その子に会う機会ないのに、知ってどうするのよ」

「…………」



苦虫をかみつぶしたような顔をして悪魔が黙る。

不満気な目で私を見てくるが、意味がわからない。


私は、放っておくことに決め、地図を片手に店へと足を向けた。

悪魔も、すぐ隣に並び、一緒に歩きだす。



「ここみたい。良さそうね」



ガラス越しに、シンプルで、ラインの良い服を着たマネキンが3体並んでポーズを決めている。

色は黒を基調としたものが多く、中に入って見てみれば、生地も上質で縫製も良かった。


奥にはスーツもかけられており、女性用もある。

私も、少し見ようかな。



「いい店ね」

「え、ああ、うーん」



心ここにあらずな返事を寄越した悪魔を見やれば、彼は目を細めてレジの方を見ていた。


何見てんの?

そう聞いた声は、レジの方から走ってきた高校生くらいの男の子の大きな声に掻き消された。



「先輩!なんでここに!?」

「やっぱオマエらか。なんでこんなとこにいるんだよ?」



レジの方から4、5人がわらわらとやって来る。

みんな高校生くらいの歳格好で、引率らしい老年の男が一人、後ろについている。



「誰?」

「後輩だ。あっちは教官」

「もしかして、これ全部悪魔?」



先輩、先輩と騒ぐ悪魔の後輩達。男女問わず陽気だ。

悪魔ってこんなもんなのか?

教官は流石に落ち着いているが。


……だいたい、なぜ悪魔が、こんなにたくさん人間界にいるんだ。