エレベーターで食堂のある6階に降りた私達は、既に人がまばらになった食堂で適当にメニューを選んで席についた。



「便利ですよね。コレ」



三上君が、社員用に会社が発行しているクレジットカードをヒラヒラさせて言う。

基本、会社直営の食堂や売店での買い物は、このカードか専用のプリペイドカードでしか買い物ができないようになっている。

自販機でも使用できるので、小銭がいらず、使い勝手がなかなか良い。

まあでも当たり前の事ながら。



「使った分だけ、給料から天引きだけどね」

「あー。僕、入社してすぐのとき、魔法のカードみたいに使いたくって、痛い目みましたよ」

「明細見てびっくりしたんだ?」

「そうです、そうです。いつの間に、僕こんなに使ったんだ?って。自販機で、ちょこちょこ飲み物買うのって馬鹿になりませんよね」



よく喋るなあ。

笑顔でペラペラと喋る三上君を見ながら、私は味噌汁をすする。


話に適当に相槌を打ちながら、なんとなく感じる違和感に疑問を持ち、考えてみれば、

誰かと、会議以外で社食に来るのは久しぶりだった。


近頃、よく喋る悪魔との五月蝿い食事が当たり前になっているが、昼は静かに摂ることが多かったから慣れないのだ。



「松永さん。どうかしました?」

「なんでもないわよ」

「そうですか?なんか食事進んでないですけど」

「……三上君が速いだけじゃない?」



考え事をしていたとはいえ、私はいつものペースで食べている。


私は、むしろ三上君が不思議だ。

ずっと喋ってるくせに、何故、私より食べるのが速いのだ。

彼は既に、かなりボリュームのあった定食を完食していた。



「もう食べ終わったなら、先に帰ってていいよ」



遠慮する事はない。

私がそういうが、三上君は困った顔をして唸り、その後意を決したように口を開いた。



「あの、僕。話すのが楽しくて、タイミング逃しちゃってたんですけど、松永さんに聞きたいことがあったんです」

「なに?」



私が促すと、彼は気を悪くしたらすみませんと、断りをいれて話を切り出した。