あの頃の君はもういないんだね。



そう言ってまた君のことを思い出す。


無邪気に笑う君。落ち込む君。それでもまた走り出す君。笑った顔も怒った顔も大好きだった。



大好きだった。

いや。今も好きに決まってる。


いっそのこと忘れられたらいいのに。

でも、忘れられるわけないことだって知ってるのに。



私はいつだって君のことを思い続けている。



「大好きだよ。就斗。」



そう言って私はまた、カッターを手首に当てる。血と一緒に過去の思い出を消すなんて絶対無理に決まっているのに。





赤い月が笑う。今日は満月だ。