(秋羽side)


「秋羽ちゃん!それ、取って!」


「はーい!」


棚の二段目、手前にあるお皿を取る。


それを、女将さんに渡すと、手際良く料理を盛り付けて行く。


「はい、私を見てないで、次作って!」


「はい!」


お鍋の中の野菜を煮込んでその間に、まな板で野菜を切る。


この人参を、お花型に切って……。


「何やってるの〜!って、可愛いわね、それ」


女将さんが私の方を見る。


「あら、焦げちゃう焦げちゃう」


そして、自分の料理にまた目を移す。


大変……だな、とりあえず。


私を含め、四人の女性が、絶え間無く包丁や菜箸を片手に動く。


朝、昼はそれほどでもないが、ここは夜がすごく忙しい。


夜ご飯を食べる暇もないのに、私達が作っているのは料理だ。


もちろん腹も減る。


すごく食べたくなる……が、我慢だ。


美味しそうな匂いを我慢しながら、料理を作り上げて行く。


「次、綾(りょう)冷や奴、椿茶碗蒸し、秋羽は、秋羽特製お膳、食後の饅頭付き!」


「「「はい!!!」」」


女将さんは、店内の女の人たちの注文を素早く指示してくる。


すごいな。手際がいい。