(秋羽side)


平助の額に手を当てる。


また酷くやられたものだな。


私は、あまり他人に見られないために、店の奥に平助を連れ出していた。


「すげえな、秋羽!」


「新撰組のために、ぴったりな力ではあるが、あまり他言はできん……」


「敵に連れさられても困るしなー」


次第に治って行く傷に、癒されたような顔を見せる平助の言葉には、緊張のかけらもない。


もう戦いは終わったから、別に気を抜かれるのはいいけどな。


「終わった。大丈夫か?平助」


「おう。ありがとな」


ニッカリ笑う平助。


平助は笑った顔が似合うな。


完全に、沖田さんを助けた時の、命をかけて戦う時の鼓動は止んだ。


だけど、落ち着き切ろうとした私の頭に、思い出したくないことを思い出した。


『だが秋羽。その力はあんまり使わんでくれ。その力は……お前の精神を削っていくぞ』


大丈夫、乗り越えてみせる。


様子を見れば、池田屋から戻るのにはまだ時間がかかりそうだ。


先に戻ろう。


「平助。私は先に帰っても良いか?」


振り返って首を傾げる平助。


「いいけど、どうしたんだ?」


「少し疲れたのだ……」


わざと疲れたそぶりを見せる。


十日も寝こむほど、人の死になれていないんだ。


平助の性格なら絶対に断らないだろう。


まあ、人の死など、嫌でもなれてしまうのかもな、私は……。