風呂の中からでもよく聞こえた。
池田屋・四国屋へと向かう、新撰組の声が……。
どうせ、行く寸前に私が起きて土方さんは焦ったのだろう。
沖田さんも、行かせないために嘘を着いたんだ。
時間があるとかなんとか、結局私と別れて5分もしないうちに向かっているではないか。
だが、私は行く。
こんな私でも、紅月霧無さえあれば、力になれる……!
私は、風呂を上がり、自分の両頬を叩いた。
まさか、こんな体験をするとは思ってすらいなかった。
髪を高く結い上げ、羽織を着る。
急いで門への道を走る。
「待ちなさい!君は、女性なのに行くつもりなのですか?」
その途中、少し怒り気味の山南さんに呼び止められた。
きっと、私の心配でもしてくれているのだろう。
そうだと嬉しいが、困る。
「そうです。本命は池田屋。平助、新八さんの怪我に、沖田さんは労咳が……」
「何ですって⁉︎沖田君が労咳!」
「大丈夫です。私なら、それを守れる。治せる。だから、行きます」
私は、山南さんの返事も聞かず、屯所を出た。
だが、山南さんが、私を呼び止めることはなかった。
私のスピードと持久力なら、何とかなる。
お願いだ、間に合ってくれ……!