それで、知りもしない奴が、何のようなのだ?


「話とはなんだ?」


私が聞くと、ピクリと肩をならせた斧口とやらは、真っ直ぐ私を見た。


「よ、よければ、付き合ってもらえないかな?好きなんだ」


「は……?何が好きで、どこに付き合えばいいのだ?」


いきなり言って、言葉になっていない。


それに、それなら私じゃなくても、いいのではないか?


「そ、そーじゃなくて!……」


言葉を探すように、あたふたする斧口。


男として、もっとシャキッとしてはどうだ。


「俺が、矢野を好きだから、付き合ってほしいんだよ。彼氏、彼女として」


「まだ、初対面だろう。だいたい、私を好きなど冗談より本題を言え。私は帰るぞ?」


思ったことを言ったつもりだった。


だが斧口は、何一つ言わずに、帰ってしまった。


な、なんなのだ!


用がないなら、最初から絡まないで欲しい。


どうやら、私は絡まれやすいのか、既にこの学校の9/10ほどの男子に、斧口のようなイタズラを受けた。


入学したての1年生がいながら、4月時点でこの有様。


なんたる不幸なのだ。