「帰りたい……」
気づけば、私はそう口にしていた。
強い悲しさだって、痛みだってもう引いたのに涙が流れる。
我慢できる痛さで転んだ子供が、意味もなく泣いているような……。
私の場合は、迷子か。
探せばいいのに、探さず泣きわめく。
だが、探すあても、探し方もわからない私はどうすればいい?
ただ、泣けばいい……。
泣かないと決めたけれど、泣き出してしまっては、止まらないのだ。
お祖父様、お祖母様。
私は、ここに来て何をすればいいのですか?
「ごめん、秋羽。俺らが悪かった。帰っていいから……」
藤堂が謝ってくる。
そんなこと言われたって……。
「家出なんて……嘘なのだ……家、ない…帰れないのだ」
周りのざわつきも、私は自身の泣き声で聞こえなかった。
とりあえず落ち着けと、左之か新八かわからない奴が、私を抱えて運ぶ。
私は、ただ弱々しく、そいつの肩をかりて泣いていた。
泣くな、泣くな……。
「っ……ぐすっ」
私の頭を、そいつはそっと撫でた。
「あり、がと……」
少しの笑顔も込めて、そっと言った。
おかげで、涙は少しずつ引いていった。