(秋羽side)


「秋羽先輩!さようなら!」


「今日もかっこよかったです!」


「ああ、ありがとう。お前達も最近どんどん上手くなってるぞ。じゃあ明日な」


剣道部の後輩達に、返事を返して帰る。


これは毎度の事だ。


全国大会に優勝した私は、後輩の憧れの的となってしまった。


そのことから、他の同級生以上の扱いを受ける。


でも、それも今年で終わりか……。


3年生だもんな。


「矢野!」


下駄箱で、名前を呼ばれた。


誰なのだ?


「少し、話があるんだけどいいか?」


確か、同級生の生徒だったか?


他クラスの男子となれば、いくら3年生になろうとも、覚えていない。


「俺、3-Aの斧口って言うんだけど……知らないよね」


「すまない、知らないな。私は矢野秋羽だ」


「知ってる、知ってる!」


確かに、さっき私を矢野と呼んだか。