『またあのお話聞くのかい?』


『うん!トキワねー、紅月のお話が大好きなの!』


『秋羽は将来、紅月の様になれるよ』


『本当?嬉しいなー!早く聞きたい!』


『そうだねー。昔々、あるところに紅月という妖怪がーーー……』


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紅月という妖怪がいました。


……だったか、続きは。


大好きで何回聞いたか覚えてないなぁ。


お祖母様はその度に、嫌な顔一つせず私に話してくれた。


その姿は、今でも懸命に覚えている。


『きわ……。ときわ……秋羽!』


誰なのだ?


あ、あれは、お祖母様か?


死んだのに、なぜここにいるのだ?


『お祖母様!』


お祖母様に触れる直前で、その顔はお祖父様に変わった。


『おじい……!お母様!お父様!』


次々と変わっていく顔。


どういうことだ?


一体誰なのだ。


目の前にいるのは、誰なのだ!


「誰なのだ!」