適当に嘘をついておけば、いろいろ教えてくれるだろう。
「えぇ⁉︎お前、家出中なの⁉︎」
「そんなに驚くことか?」
「いや、そーじゃないけど」
そーじゃないにしても、確かにお前はオーバーリアクションだった。
実際のところ、家でより驚くようなことが起きて、ここにいるのだがな。
「そーだな……どういったところがいい?」
どういったところと言われても、どんな仕事があるのかさえわからない。
かと言って、私の都合に合わせてこいつを振り回すのも失礼か……。
「やはりよい。自分で見つける」
私は、男に一礼して去ってもらった。
振り返った景色に、私はため息どころか全ての気力さえ失いそうになる。
掃除、しなければな。
「うっ……」
掃除し始めて1分。
早くも挫けそうになる。
掃除は嫌いだったり、しないわけではないが、これほどひどい部屋を掃除する機会など、あるはずもないのだ。
「やるのだ私!」
明日には追い出されるのならば、早くに眠らなくては睡眠不足だ。
そういえば、食糧はどうしようか?
ああ、あの小さな男にでも頼めばいいか。
それから、掃除が終わったのは20分後だった。
長い格闘を終えた私は、ピカピカになった部屋に感心する暇もなく、畳に倒れこんだ。
布団は、ないんだろうな。
あっても、さすがにこの部屋の押入れに放置された布団を使う気にはならない。
今日は散々な一日だったのだ。
明日になって、夢であってくれたり、帰ることができれば幸いだ。
早く明日よ訪れてくれ。
私は、すぐに眠りに落ちた。