「体調を崩していて……」
「そうだったのですか。それでしたら、そのように仰って頂ければよかったのに。そうすれば……」
「あら、何をするの?」
「看病に決まっているでしょ」
「本当?」
「貴女が、普通に看病すると思わないわ」
「な、何を言うの」
痛いところを突かれたのだろう、急にムキになりだす。
何ともわかり易い変化に他の女達は、一斉にクスクスと笑い出す。
彼女達にとって誰もが敵で、蹴落とさないといけない人物。
だからシオンの目の前で相手の悪い部分を指摘し、ライバルを消していこうと試みる。
実にあざといやり方だが、彼女達にしてみればシオンに好かれようと必死だった。
しかし逆にそれが悪い印象を与えることを彼女達は知らず、発せられる言葉はどれも毒が含まれている。
それに言い争いが終わる気配はなく、それどころかますます熱を帯びていくのだった。
「恩を売るのね」
「馬鹿馬鹿しいわ」
「何よ」
「そのようなことを考える貴女の方が、厭らしいわよ。普通は、そういう考えをしないものよ」
徹底的に追い詰めこれで一人脱落させられると確信していたが、逆に言い返されてしまう。
予想外の反撃に何か言い返さないといけないが、なかなかいい言葉が見付からない。
勝利を確信してからの敗北は精神のダメージは著しく、怒りのあまり身体が小刻みに震えだす。
「あら、本心が出ちゃった」
「う、煩いわ」
「大声は、はしたないわ」
今の一撃が決定的なものとなったのか、この時点で勝者と敗者決定する。
敗者は顔を隠しながらそそくさとシオンの前から立ち去り、勝者はシオンにアピールを行い自分を売り込む。
だが、これで戦いが終わったわけではなく、一人蹴落とした程度で浮かれている場合ではない。
シオンを狙うライバルは多く、下手すれば血を見そうな勢いである。
目の色を変え相手を貶し続けている彼女達の姿にうんざりしたのか、シオンは何も言わずに立ち去ってしまう。
それに気付いていない女達は互いに罵声を浴びせ続け、周囲の者達を唖然とさせるのだった。


