「どうして?」
「それが世論というものだ」
「世論って?」
「世間一般の意見というやつだ」
「ふーん、やっぱりおかしい」
「ああ、そうだね」
「うん。おかしいよ」
他人に左右されない自分自身の意思を持つ子供に成長してくれたことが誇らしかったのか、父親はシオンの頭を撫でる。
父親に撫でられたことが余程嬉しかったのか、シオンは満面の笑みを作る。
そんな無邪気な息子に父親も顔の筋肉を緩め、温かい眼差しを向けている。
「父さんは、何もしないの?」
「そうだな……いつか」
しかし、明確な期日を言うことはできないでいた。
この状況を打破するには、それなりの解決方法提示しなければ失敗に終わる。
また、一度根付いた制度を根底から覆すには、それ相応の体力も必要だ。
息子に促され明日からできるものではなく、失敗のリスクも大きい。
「シオン」
「何?」
「現在の階級制度がおかしいと思える者がシオンの目の前に現れたら、その者を大切にするように」
「うん。わかった」
「いい子だ」
澄んだ瞳で父親に向かって頷く幼い頃の自分の姿に、シオンは身体がこそばゆくなっていく。
あの当時は本当に純粋で、汚れてはいなかった。
だが、多くのことを見聞きし体験してからは、徐々に身体の内側が汚れていっていることに気付く。
それでも、階級への不満は続いていた。
その中で出会ったのが、友人のアイザック。
彼もシオンと同じように階級制度に異論を唱え、それを盾にして好き勝手に振舞っている人物に苦労させられていたと話していた。
階級制度に不満――という共通点からすぐに仲良くなり、いい友人関係を築きながら現在に至っている。
「見つけたよ、父さん」
と、夢の中の父親に呟くが、直接父親に向かって言った方がいいのではないかと思いはじめる。
息子がどのような生活を送っているか気になっているだろうし、何より仕事を上手くやっているかどうか心配だろう。
「親不孝もの」と言った後、シオンはおかしかったのか笑い出していた。


