着信があった時、瞬時に出られるように枕の横に携帯電話を置く。
これで寝る準備が整い、有意義な睡眠を貪ることができる。
シオンは大きく息を吐き出すと瞼を閉じ、意識を闇の中に沈めた。
◇◆◇◆◇◆
久し振りにシオンは、夢を見た。
いつもであったら激しい疲労の影響で、夢を見ず朝を迎える。
そして今回見ている夢は現実と夢の世界が区別できないほど鮮明で、生々しいもの。
シオンは自分が見ている夢が自身の過去の出来事だと気付くには、少し時間が掛かった。
また自分自身が過去の自分に戻ったわけではなく、自分の目の前に当時の自分がいるという何とも奇怪な夢に、シオンはどうしてこのような夢を見ているのかと心理状況を不安視する。
目の前にいる自分は、5歳くらいだろうか。
父親に、ドームを覆い尽くす現状について尋ねている。
その小生意気な質問にシオンは、昔から科学者向きの性格をしていたことを知る。
「シオンは、どう思う?」
「おかしいよ。だって、同じ人間でしょ? 何で、上と下で暮らしているだけで違うのかな」
「そうだな。シオンが言うように、今の状況はおかしい。だが、多くの者がそれが普通と思っている」
「どうして?」
息子の正直な質問に父親は苦笑を返すと、普通と言った意味について話していく。
勿論、最初から多くの者がこの制度について正しいと思っていたわけではない。
だが、それが心に余裕を齎す心地いいものだと知り、尚且つこの状況が長く続けば訂正するものもいなくなってしまう。
ましてや人間は永遠の命を持つ生物ではない。
制度が確立された当時の人物は亡くなり、制度そのものが定着した世に誕生した子供は、それが常識だと認識し疑問さえ持たなくなる。
現在ドームに暮らしている者全てが後者の者達で、だからこそ「おかしい」と異論を唱える者がいない。
「だけど、シオンは違う」
「おかしいと思った」
息子の言葉に、父親は頷き返す。
たとえ現在の階級制度が常識として定着していても、中には階級自体が人間の心を腐らせていると気付く者も出てくるという。
それが息子のシオンであり、自分だと父親は話す。しかし同時に、面と向かってそれを誰かに言ってはいけないと注意する。


