アメット


 このような日に一斉に咲き乱れるのが、色彩豊かな傘。

 科学力が大幅に発展して尚、昔の原型を留めている傘という代物は、ある意味でこれが完成形なのではないかとシオンは考える。

 といって、外界へ赴く時に着る例の防護服ははっきり言って動き難い。

 やはりこれが理想の形なのだろうと、科学者の観点から人々が雨の日に使用する傘についてあれこれと思慮する。

 ふと、そのようなことを考えていると部屋の隅に溜まっている物に目が行く。

 その物体と視線が合った瞬間シオンは盛大な溜息を付き、自分が今何をやらなければいけないか思い出す。

 部屋の隅に置かれていたのは、なかなか洗濯する機会がなかった汚れ物。

 「後でやればいい」と後回しにしていた結果、それなりの量が溜まってしまった。

 流石に量が量なので洗濯しないといけないので、シオンは汚れ物を一纏めにして抱えると洗濯機の中に投げ入れる。

 シオンが使用している洗濯機は、一般家庭に普及しているごく普通の代物。

 電源ボタンを押し洗剤の量と好みの洗い方を設定すれば、後は勝手に洗濯してくれる。

 尚且つ抗菌と乾燥機能までついているのだから、殆んど人間の手を煩わせることのない便利な機械である。

 そのような物を持っているのなら定期的に洗濯を行えばいいのだが、いかんせんシオンの生活面は期待できない。

 多少の炊事は期待できるが、これさえできないのなら生活能力は皆無。

 自分の生活面の向上を図らなければいけないことはわかっているが、なかなか実行できないのが現実。

 科学者としての仕事が忙しいのが本音だが、便利な機械に囲まれて生活している今、それは言い訳だということにシオンは気付いているが、やはり言い訳をしたいもの。

 情けない自分の姿に再び盛大な溜息を付くと、シオンは洗濯機の電源ボタンを押し洗い方を設定していく。

 次の瞬間、ガタガタと動き出し大量の汚れ物を綺麗にしていくのだった。

 後は洗濯終了を知らせる電子音を待てばいいと、シオンは寝室に戻りベッドの上に横になる。

(今、仕事中か)

 折角の休暇を雨で台無しにされたので、暇を持て余している。

 暇潰しでオンラインゲームをしてもいいが、あの世界は独特の雰囲気と特殊な人間しかいないことを知っているので手を出すことはしない。

 それなら何をすればいいかとなると、やはり空腹によって阻害された二度寝をするのが一番。

 シオンはいそいそと布団の中に潜ると、枕を定位置に置き直す。

 途中で安眠を妨害されたくないので携帯電話の電源を切ろうと思ったが、立場上それは危険だと気付き電源を切るのを諦める。