昨日入手した情報では昼から雨が降るとなっていたが、現在は雨の予定時刻ではないのでドーム内は人工の明かりが燦燦と降り注ぎ、天井には青空と幾つもの白い雲が投影されていた。
今、ドーム内で暮らしている者が活動を開始するというのに、自分はベッドに横になっている。
という優越感に浸っていると、急にシオンの腹が空腹を訴えるかのように鳴り出す。
そういえば昨日はシャワーを浴びた後、身体を覆う極度の疲労感の影響ですぐにベッドに横になってしまった。
あの時は疲労の方が勝っていたが、今考えると口にしたのは栄養価が殆んどないペットボトル飲料のみで、何時間も固形物を胃袋に入れていないのだから鳴るのは当たり前だ。
日頃の睡眠不足を解消しようと二度寝を試みようとしたが、先程から胃袋が空腹なので何か食べ物を入れて欲しいと訴えてくるので寝付けない。
身体の要求に応えようとシオンは鉛のように重い身体を起こしキッチンへ向かうと、何か手軽に食べられる物がないか探す。
生憎、そのような便利な食べ物は残っていなかった。
シオンは仕事が忙しい職業に就いているので、自宅で炊事を行なう機会が殆んどない。
また忙しい時は面倒なのでついつい外食で済ませてしまい、食料品が冷蔵庫や棚に納められていることは滅多にない。
(何か買っておけば……)
しかし今更後悔しても遅く、空腹を訴える腹の音は止まらない。
この状態では二度寝は無理と判断したシオンは、何か食べられる物を買いに行こうと寝室に戻り、私服に着替えだす。
(さて、この時間帯は……)
人間が深い眠りから目覚め活動を開始する時刻とはいえ、まだ6時を回った頃。
大半の本格的に活動する時刻には早く、勿論元気よく営業している店は限られているが、その店で食べ物が買えないわけではないので、シオンはその店へ行き食べ物を購入することにした。
流石、あらゆる面をコンピューター制御で管理しているドーム内。
一般的に「早朝」と呼ばれる時刻でも気温は一定の水準を保たれ、外界の安定しない気温と違いとても過ごし易い。
早い時刻から電車は走っているが、散歩にちょうどいい気温なので今回は電車を使用せず、徒歩で店に向かう。
その途中、大きい袋を持つ朝帰りらしい二十代前半の女の人とすれ違う。
だが、相手が朝帰りではないと気付いたのは、彼女が腕に身に付けている物であった。


