「で、いつ行なう?」
『調査か』
「そう」
『行く者が決定次第。最下層の住人からの苦情だから、どうでもいいというのが上の考えだろう』
「なるほど」
『で、休暇明けのお前待ち』
「ご丁寧に、有難う」
『嫌味か?』
「いや、そういう訳じゃない。同じ階級の者として、参加しないといけないということだよ」
『……だな』
アイザックは、シオンが言いたいことを瞬時に理解する。
要は公平に行なわれるじゃんけんに参加し。
最下層へ赴く者を決定しようというもの。
その裏に隠されているのが「抜け駆けは許さない」という、鬼気迫った真情。
それだけ、誰も汚染が酷い場所へ行きたがらない。
『で、明日はゆっくりできそうか?』
「明日、天気が悪い」
『マジ?』
「外界の時といい、とことんついていないよ。明日、天気が悪くなければ買い物に行こうと考えていた。こうなったら自棄酒でもしたいが、それをしたら身体を壊すから止めておく」
『それがいい。身体を壊したら金が掛かって仕方がないし、何を言われるかわかったものじゃない』
それについていい思い出がないのか、アイザックの愚痴が続く。
友人の愚痴にシオンは苦笑すると、最下層の調査決定を教えてくれたことに感謝する。
シオンの感謝の言葉にアイザックは礼を言われるほどのことをしたわけではないと言い返し、アイザック側から通話を切る。
フッと溜息を付いた後、シオンは机の上に携帯電話を置くとキーボードを叩きだす。
彼が検索しているのは、最下層のデータ。
知識としてどのような場所かは知っているが、実際に訪ねたことはない。
だから「もしも」の時の為に、予備知識を付けようと最下層に付いて調べる。
最下層はその名の通り階級が一番下の人間が暮らしている場所で、上部に暮らす人間が仕事以外で訪れることはない。
収入も極端に低く、一部の噂では略奪が横行しているという。
また「悪いことをしたら、最下層へ行かせるわよ」が、子供の躾に使われているほどだ。


