統治者主催のパーティーを境に、明らかに二人の雰囲気が変わった。

 互いの雰囲気の違いは明白で、クローリアはシオンを意識してしまうのだろう、家政婦の仕事に身が入らず失敗を繰り返す。

 今日は床掃除の途中で頭を壁にぶつけてしまい、ドスっという鈍い音を響かす。

「大丈夫か!?」

「だ、大丈夫です」

「今、凄い音が……」

「へ、平気です」

「頭をやったのか」

 シオンは自室で仕事を行っていたが、鈍い音に驚いたのだろう、部屋から飛び出しクローリアのもとへ駆け寄ると状態を確かめる。

 クローリア本人は「大丈夫」と言い続けているが、見れば頭頂部にコブができている。

 また、相当痛かったのだろう、眼元に涙が滲み出ていた。

「無理はしない」

「で、ですが……」

「こういう時は、頼る」

「……はい」

 本当はシオンに頼りたい気持ちもないわけではないが、いかんせんシオンの見た目が破壊力抜群。

 出会った当初は伊達眼鏡を使用し、身嗜みはお世辞ながらもかっこいいとはいえなかった。

 しかし正体を話した今、変装することなく自宅の中では伊達眼鏡を外している。

 その姿から思い出すのは、パーティー時の正装姿。

 刹那、クローリアの顔が紅潮しだす。

「クローリア」

「は、はい!?」

「打ち所が、悪かった」

「い、いえ」

「意識が半分飛んでいた」

「……すみません」

「まだ、足も治り切っていないのだから、無理はしない方がいい。これ以上、怪我をしたら困る」

 勿論、シオンはクローリアの身を心配して発した言葉であったが、クローリアは別の意味で捉えてしまう。

 怪我をしては困ると言っているのは、家政婦がいなくなるからか。

 それともクローリアの身を本当に心配しているからか。

 答えがわからないからこそ、もどかしさが続く。