シオンからの誘いにクローリアは頷くと、促されるままにシオンの隣にちょこんっと腰掛ける。
しかし彼と密着するのはこそばゆく緊張してしまうので、両者の間に隙間が生じる。
もっと近付いていいと手招きするが、クローリアは頭を振り決して近付こうとはしない。
彼女の初々しい反応に、シオンは微笑を浮かべる。
異性でこのような反応を見せる人物は、一人としていない。
多くの異性がシオンに気に入られようと努力し、自ら望んで隣に腰掛けようとする。
だが、クローリアは彼女達とは全く違う反応を見せ、恥じらいを持っている。
シオンはクローリアを一瞥すると、止まっていた会話を再開する。
戻って来た時、いつも美しい自然の風景を投影し、休んでいるという。
この風景に囲まれているとストレスが発散し、嫌なことも忘れる。
「これが、本物なら……」
「シオン様?」
「日差しを浴び、草原で寝転んで……ゆっくり昼寝したい。こんな巨木の下だと、最高だろうね」
「お弁当も一緒に」
「作ってくれる?」
「……シオン様が、望まれるのでしたら」
「嬉しいな」
「が、頑張ります」
気合を入れるクローリアに、シオンは優しく微笑んで見せる。
相変わらず「爽やか」という言葉が似合う笑顔に、気分が落ち着かない。
クローリアの反応に彼女が何を考えているのか、何となく理解したのだろうシオンは明後日の方向に視線を向けると、無言で立ち上がる。
「何処へ?」
「何か、食べ物を持って来る」
「わ、私も……」
「クローリアは、この場にいていいよ。誰かに会ったら、あれこれと聞かれる。それはそれで、大変だろう」
「……はい」
「だから、この場にいていい。あと、投影用の機械は複雑だから、できれば触らないで欲しい」
それだけ注意すると、シオンは退室してしまう。
一人取り残されたクローリアは近くに置かれている機械に視線を合わせるが、先程の言葉があるので触れるわけにはいかない。
クローリアは大人しくシオンの帰りを待ち続けるが、好奇心が疼き出すのだろう部屋の中を歩いて見て回る。


