アメット


 運命は、時に幸福を齎す。

 今、クローリアにはそれが当て嵌まる。

 それについてシオンは苦笑すると、自分にとっては不幸を齎していると話す。

 クローリアと出会ったことは幸福であるが、それ以外に関しては不幸といっていい。

 また、浄化プロジェクトも思ったように進まず、躓くことの方が多い。

 だからこのことを「不幸」と表現する。

「本来は、青く美しい惑星だ。しかし人間の傲慢によって、あのような外観になってしまった」

 青い空に青い海。

 植物の緑に、色とりどりの花々。

 だが、それは記録の中にしか存在しない。

 データ収集ということで外界に出ることがあるシオンだが、外界は荒れ果てた大地。

 青い空や青い海は存在せず、植物に至っては独特の進化を遂げている。

 そして見渡す限り茶色の大地が広がり、防護服を纏わなければ身体を害する。

 いや、最悪の場合は死んでしまうだろう。

「そのような場所に……」

「そんなに、心配することはないよ。それ相応の準備はしているし、常に仲間と通信しているから」

「それでも……」

「優しいね」

「シオン様の話を聞いていますと、とても恐ろしい場所と思いまして……ですので、心配で……」

「有難う」

 そう言いつつ、シオンはクローリアの頭を撫でる。

 突然撫でられたことにクローリアは身体を硬直させ、微かに頬を赤らめる。

 しかしシオンに気付かれることは恥ずかしいので、反射的に視線を逸らす。

 するとそれを拒絶の意志と取ってしまったのだろう、シオンが詫びる。

「ち、違います」

「違う?」

「いきなり、撫でられ……」

「ああ、悪かった」

「で、ですから……」

 クローリアの否定にシオンは頭を振ると、何の前触れもなく撫で驚かせてしまったことを謝ったと話す。

 シオンはアークと違い、女心に詳しいわけではない。

 このような時、アークはどのようなことを言うのか――と考えるが、だからといって彼に頼りたいとは思わない。