アメット


「宇宙?」

「外の暗い空間」

「宜しいのですか?」

「勿論」

「出られるのですか?」

「いや、無理」

 クローリアの頼みに、シオンは頭を振る。

 宇宙空間はドームの外以上に劣悪な環境で、きちんと準備を行わなければ、立ち入ることができないと話す。

 それに事故が発生すると後々面倒になるので、宇宙空間は特殊ガラスを挟んで見て欲しいと、シオンはクローリアに頼む。

「シオン様がそのように仰るのなら、従います。シオン様には、様々な面でお世話になっていますので」

「そんなに、改まらなくても……」

「いえ、本当ですから」

 生真面目に受け堪えるクローリアに微笑を浮かべると、シオンはある方向を指で示す。

 指示された方向にあったのは、漆黒の空間。

 これこそが、シオンが話していた「宇宙」という場所。

 統治者一族が暮らしている場所に来た時に少しだけ見ていたが、このように真剣に眺めていると新しい発見をする。

 あれは何か。

 これは何か。

 クローリアは興奮しながら、シオンに説明を求める。

 クローリアの質問にシオンは、自分が持つ知識を総動員しながら、丁寧に説明していく。

 どれもが好奇心を擽るのだろう、瞳が輝く。

 すると何かを思い出したのだろう、宇宙空間を眺めていたクローリアの表情が曇る。

「どうした」

「多くの人は、この世界を……」

「知らない」

「知識は?」

「知識としては、持っている。持っているけど、上に行くことはできない。それが、決まりだ」

「階級……ですね」

 それに対し、シオンは無言で頷く。

 明確な階級で縛り付けられている今、これを見ることができるのはごく一部。

 その中でいえばクローリアは特殊といっていい存在で、シオンと出会っていなければ一生最下層で暮らし、世界が広いということを知らないままであった。