最下層にも、同年代の異性は存在する。
しかし、シオンは――
明らかに雰囲気が違う。
統治者一族や自分の雇い主だからという意味を抜かしても、シオンは特別といっていい。
階級が上がると、このような人物が増えるのか――と、クローリアはあれこれと考えてしまう。
「どうした?」
「あ、あの……」
「おかしいかな?」
「そ、そんなことはありません。いつものシオン様と違いまして、驚いて……その……かっこいいです」
「有難う」
オドオドしながら素直な感想を言うクローリアに、シオンは爽やかとも取れる笑顔を向けると、一言「綺麗だね」と、褒める。
突然の言葉にクローリアはこれ以上赤くなれないほど顔を紅潮させると、パーティーに参加する人の方が、もっと綺麗な人がいるのではないかと否定しだす。
「確かに綺麗な人はいるけど、クローリアとは雰囲気が違う。クローリアの方が、品がある」
「ですが、私は……」
ふと、途中でクローリアの声音が止まる。
その理由は、シオンが彼女の前に、人差し指を突き出したからだ。
自分は、最下層の住人だから。
これからは、その言葉を言ってはいけない。
そう、シオンは話す。
「今はアムルの養女で、A階級の人間だ」
「わ、わかりました」
「自己紹介で、そういうと言い」
「パーティーでは、何をすればいいのでしょうか」
「俺の側にいればいい。一人でいるのは心配だし、統治者一族に声を掛けられると厄介だから」
「厄介?」
「手が早い奴がいる」
だからシオンは、常に側にいた方がいいと話す。
目の届く範囲にいれば、守ることができる。
また、手の早い人物に捕まってしまうと一大事なので、一人で勝手に出歩かないでほしいと注意する。
必死に語るシオンの話に、クローリアはコクコクと何度も頷くしかできない。


