その後、和気藹々と食事を取る。
途中でグレイが突拍子ないことを言いだしシオンを困らせ、クローリアの手を止めてしまう。
微笑ましい姿に、グレイの笑いが響く。
グレイの言動にシオンとクローリアは反射的に互いの顔を見合わすと、苦笑し合うのだった。
◇◆◇◆◇◆
パーティーの当日。
メイドの手によって美しく着飾ったクローリアは、大きな姿見の前で茫然と立ち尽くしていた。
これが自分?
それが、クローリアの気持ち。
今、身に付けているのは一流の品々で、最下層では決して手に入れることができない。
それをこのように身に付けて、パーティーに参加することができる。
それも統治者一族が主催のパーティーなのだから、緊張しないわけがない。
現に、クローリアの身体は小刻みに震えていた。
その時、ドアが控え目に叩かれた。
音と同時にクローリアは振り返ると、見知らぬ人物の登場に「どちら様ですか?」と、尋ねてしまう。
「俺……だけど」
「まさか、シオン様!?」
「当たり」
「め、眼鏡は……」
「あれは、伊達だよ。正体が判明すると面倒だし、仕事に関わってしまう。だから、眼鏡を使用していた」
「そうなのですか」
そう言いつつクローリアは納得しようとするが、正装のシオンを間近で見ていると、簡単に納得できるものではない。
いつもは身嗜みに無頓着で、髪はボサボサに近い状況。
しかし今はパーティーに参加するということで、それに相応しい姿をし、別人といってもいい。
本来のシオンの姿は、整った顔立ちの青年といっていい。
そのような人物が側にいて、自分の雇い主――と考えれば考えるほど思考が混乱し、クローリアはシオンと視線を合わすことができない。
それ以上に心臓が激しく鼓動しだし、別の意味で身体が硬直してしまう。


