勿論、この天候変化は自然発生のものではなく完全管理の下に決まっている。
よって昼の時刻を迎えたと同時に雨を降らすので、注意しましょうという警告も含まれている。
また雨量もコンピューター制御で自由自在で、管理している者の気分次第で大降りから小雨まで調節できる。
しかし、生憎の天気に気分が滅入ってしまう。
明日は、外界に赴いてまで勝ち取った休日。
午前中いっぱいは就寝し午後から衣服や雑貨品を見て回ろうと考えていたが、予定の変更を余儀なくされる。
降るといって降らないような自然の天候と違い、天候はコンピューター制御されているので降るといったら確実に降る。
ただ幸い雨量は小雨程度なので、びしょ濡れの心配はない。
だからといって、雨に濡れるのが気持ちいいというわけではない。
濡れたら濡れたで衣服を洗濯しないといけないし、風邪をひかないようにとシャワーを浴びる。
正直、それらの行動は面倒のなにものでもなく、シオンにとって雨の日に出掛けるのは憂鬱で億劫であった。
「ついていない」
シオンの口から、嘆きの言葉が漏れる。
確かに、外界に赴いていた時から彼はついていなかった。
花粉を全身に浴び、更に突風の影響で貴重なサンプルを吹き飛ばされる。
また休憩の時に散々嫌味を言われ、不愉快になる。そして折角の休日は、雨で台無しになってしまう。
流石にここまでついていないと、何か呪われているのではないかと勘繰ってしまう。
だが科学万能のこの時代、呪いなど時代錯誤も甚だしい。
ついていない時は何をやってもついていないという言葉を思い出したシオンは、そうだと自分に言い聞かせ自身を納得させる。
ふと、携帯電話が鳴りだす。
シオンは着信音を鳴らす携帯電話をポケットから取り出すと、電話に出る。
相手は、仕事をしているはずのアイザック。
突然の電話に何かトラブルが発生し助けて欲しいのかと尋ねると、アイザックはそのようなことで電話をしたのではないと返す。
「で、何?」
『最下層へ行く』
「お前が?」
『違う。最下層へ行くということが、決定したんだ。何でも、最下層の大気調査をするとか……』
アイザックの衝撃的な言葉に、シオンの顔が引き攣る。
調査といっても階級が上の者が行くわけがなく、必然的にシオンやアイザックと同等の階級の者が行かないといけない。
それに最下層は外界ほど大気が汚染されているわけではないが、防護マスクがないと歩けないほど酷い。


