「……それならいいけど」
「当たり前だ」
真剣に言い返す父親に、シオンは安堵する。
流石に三つの統治者が同じように権力を行使するようになったら、ドームの生活が悪化してしまう。
それを危惧したからこそ、注意を促した。
自分中心に物事を考えず、他者を思い遣る――
それは、統治者としての素質のひとつ。
それを身に付けつつあることに、グレイは息子が立派に成長していると見る。
また、いい出会いもしている。
「シオン」
「何?」
「たまには、顔を見せろ」
「仕事が、忙しいし……って、急に何?」
「構わないだろう」
「寂しとか?」
「それに近い」
親子関係は良好なので、父親にこのように言われたらシオンは断るわけにはいかない。
ただ「いつになるか」と、言うしかできない。
息子の言葉にグレイは残念がるが、仕事を強制的に休ませるわけにはいけないとわかっているので、一言「都合のいい時でいい」と、返す。
しかし次に発せられた言葉で、シオンは飲み物を噴き出しそうになってしまう。
顔を見せる時はシオン一人ではなく、クローリアを一緒に連れて来て欲しいというもの。
また、彼女のことを気に入ったのか、グレイは「できの悪い息子を頼む」と、クローリアに頼んでいた。
「と、父さん!」
「世話になっているのだろう?」
「ま、まあ……」
「ち、違います! お世話になっているのは私の方で、シオン様には迷惑を掛けております」
親子の会話を遮るかのように、クローリアの大声が響く。
突然の大声にグレイは目を丸くし、見慣れているシオンは苦笑する。
一方、突然大声を上げてしまったことに羞恥心を覚えたのか紅潮しだす。
グレイは、クローリアを見て思う。
階級制度によって区別するのは、そもそもの間違いで、上下関係なく交流を持てたらいいと考える。
最下層といって差別するのではなく、交流を持てば自分が誤った認識を持っていたと気付かされるだろう。
現に、クローリアは普通の女の子である。


