胃袋が、空腹を訴えている。
それがわかっていながら、クローリアに何も食べさせないほどシオンもグレイも悪魔ではない。
シオンはフォークを手に取るとクローリアの前に差し出し、先に料理を食べていいと促す。
シオンの促しにクローリアは反射的に頭を振るが、胃袋は何度も空腹を訴えるようになる。
「腹、減っているだろう?」
「……はい」
「なら、食べないと」
シオンに頷きつつフォークを手に取ると、料理を一口。
ちょうどいい味付けの料理に、クローリアの顔が明るくなる。
クローリアが美味しく料理を食べていることが喜ばしかったのだろう、シオンは笑顔を作る。
そんな彼等の反応にグレイは、二人はいい関係を築いていると知る。
「お前も、食わないのか?」
「食べる」
「沢山食べ、大きくなれ」
「これ以上、大きくはなれないよ」
「子供は、いつまで経っても子供だ」
「そういうもの?」
「そういうものだ」
これ以上口にするのが恥ずかしいのだろう、照れを隠すかのように紅茶を一口含む。
シオンとグレイの話を聞いていたクローリアは、食事を止めると自分の父親が病気だと伝える。
「ああ、薬か……」
「お給料は、其方に……」
「そんなに悪いのか」
「空気が汚いからね」
「浄化は、難しいか」
「そういう施設がないよ」
「……そうか」
「昔からなかった?」
「設置されていたという話は聞いていない」
シオンの話にグレイは、少しでも暮らし易くする為に浄化装置を設置するべきではないかと話す。
しかしこれについても、難題の方が大きい。
浄化設置するには技術者を最下層を向かわせないといけないが、階級が前面に出る世界、好き好んで最下層へ行く人物はいない。


