アメット


 一番下を作って、反乱を防ぐ。

 というのが、主な理由。

 だからクローリアを含め、最下層の住人を閉じ込めた。

 語られる内容に、クローリアの顔が曇る。

 もっときちんとした理由があって、最下層という場所が誕生したと思っていたクローリアにとって、突き付けられた事実は心に深く突き刺さる。

 グレイは他の者達とは比べられないほどの力を持ちながら、何もしてあげられないことを詫びるかのように、クローリアに向かって頭を垂れる。

 グレイの態度にクローリアは頭を振ると、そのようなことをしないでほしいと頼む。

 しかしグレイは、頭を上げることはしない。

「シ、シオン様」

「俺も、同じように謝らないといけない」

「どうして……ですか」

「統治者の一員だ」

「ですが、シオン様は優しいです」

「そうかな?」

「こうやって、多くのことをして頂いています。それと……えーっと……お、お名前は……」

「グレイだ」

「グレイ様も、気に掛けて頂けて……」

 階級が上の人物は、踏ん反り返って威張っていて……といい印象がなかったクローリアにとって、グレイがこのように頭を垂れたのは意外そのもの。

 これにより躊躇いなく頭を垂れたグレイは「いい人」と、判断する。

 だからこそグレイの行動に、クローリアは委縮する。

「貴女一人に、何かを……この行為を償いと取っても構わない。本当は、貴女が暮らす階層の全ての住人を……」

「私こそ、失礼なことを――」

「いや、そのようなことはない。今まで、手を差し伸べることはしなかったのだから。だから、貴女だけでも……」

 この場に来たのだから、楽しんでほしい。

 そう、グレイは口にする。

「……はい」

 グレイの申し出に返事を返すと、クローリアは反射的にテーブルに並べられている料理に視線を向ける。

 色とりどりの美味しそうな料理に、食欲をそそる匂いが空腹の胃袋を刺激する。

 部屋の中に響く間延びした音のクローリアは顔を紅潮させ、シオンとグレイは表情を綻ばす。