「あの……今回……」
「養女の件?」
「はい」
「この方法が、面倒じゃない」
「私は、このままシオン様の……」
「俺は統治者一族で、クローリアは養女だからA階級。この関係だと、特に違和感はないよ」
「パーティーでは……」
「俺の家政婦と言えばいい。一人で参加はつまらないから、クローリアを伴った……と、説明する」
パーティーという単語に何かを思い出したのか、シオンは間の抜けた声音を出す。
パーティーに参加するには、それ相応のドレスを用意しないといけない。
また、その人物に似合う似合わない色があるので、ドレス合わせが必要だ。
そう語るシオンに対し、クローリアはオドオドしてしまう。
「お、お高いのでは……」
「ドレス?」
「はい」
「高い……かな。だけど、ドレスを着ないわけにはいかない。その姿で行くと、逆に目立ってしまう」
シオンの指摘にクローリアは自身が纏っている服を眺めるが、言われた通り華やかなパーティーに参加できる服ではない。
また、パーティーに参加した経験がないクローリアにとって、シオンの言葉が大事。
それに参加するにあたって、多くのことを聞かないといけない。
「その前に、ドレス」
「どうすれば……」
「メイドに任せる。俺は、こういうことには詳しくない。それに、異性同士の方がやり易いだろう?」
「大丈夫でしょうか」
「何が?」
「いきなりシオン様と来た、私に……メイドの皆様方は、いい顔をしていませんでしたので……」
「事前に、事情を話しておくか」
彼女達は事情を知らないからこそ、突然現れたクローリアに不信感をあらわにしていた。
「アムルの養女になった」と話しておけば、トラブルに発展しないだろうとシオンは考える。
それにアムルの信頼度は高いので、血が繋がってはいないとはいえ、その者の娘に危害を食わせることはない。


