見たことのない数々の代物に、クローリアは溜息を漏らしつつ眺める。
これこそが、優雅な生活というべきものなのか――と、夢のような世界に、統治者一族が暮らしている場所へ来たということを改めて知る。
同時に自分が「場違い」ということを、まざまざと認識する。
ふと、控え目にドアが叩かれる。
「は、はい」
「入っていいかな」
「ど、どうぞ」
クローリアの言葉と同時にドアが開かれ、入室してきたのはアムル。
突然のアムルの登場にクローリアは腰を上げると、オドオドとしだす。
アムルはドアを閉めるとクローリアの前に進み出ると先程グレイと交わした内容を伝え、立場は心配しなくていいと安心させた。
「ご、ご迷惑では……」
「そんなことはないです」
子供がいない自分にとって、娘ができたことは嬉しい。
そう、アムルはクローリアに伝えると、いい子を養女にできたことが嬉しいのか、微笑を浮かべる。
そして、周囲に偽っていることがバレてはいけないので、義理の娘として振る舞ってほしいと頼む。
急に養女の話をされ混乱しているのだろう、なかなか返事を返すことができない。
「迷惑……かな」
「い、いえ」
「やはり、戸惑いますか」
「……はい」
「そう……ですね」
「シ、シオン様は……」
「勿論、心配されていました。それに、貴女のことも聞いています。そのことから、気になさることも……」
「だから、養女に」
「その方が、安心ですから」
アムルの説明に、クローリアの心の中に温かいモノが広がっていく。
シオンがあれこれと心配してくれていることはわかっていたが、これほどのものとは思ってもみなかったのだろう、言葉が見付からない。
ただ、養女として振る舞うことで、最下層の住人だと心配しなくていい。
それにA階級の人間も統治者一族に仕えているので、腕輪をそのままにしておいても問題はない。
自分の為にあれこれと考えてくれることに申し訳なくなったのか、クローリアは深々と頭を垂れていた。


