父親の意見は尤もで、シオンもクローリアの立場をどのように誤魔化そうか悩んでいた。
ふと、いい方法が思い付いたのか、シオンはクローリアを親戚の子供とすればいいと提案する。
親戚の一員とすれば深く追及されても上手く誤魔化せば、参加者に怪しまれることはないだろう。
ただ、これについて問題がないわけではない。
多くのメイド達がクローリアを目撃しており、グレイの親戚ではないことを知っている。
彼女達の口止めをしないといけないが、女は元来お喋り好きな生き物。
口止めを要求しても、彼女達が口外しないか心配になってくる。
権力を用いる。
そういうやり方もないわけではないが、グレイもシオンも自身が持つ権力で一方的に抑え付けるのを好まない。
どうすれば――
と考えると、グレイがひとつの案を出す。
「養女にするか」
「誰の?」
「アムルだ」
「いいの?」
「その方が、面倒は少ない」
「……確かに」
下部に暮らしている者を養女に迎える。
それは数として少ないが、決してないわけではない。
それにアムルはA階級の人間なので、その人物の養女となれば必然的にクローリアの階級も上がる。
そして、今回のパーティー参加者の中にもA階級の人間も参加するので、違和感はない。
「自分の階級を気にしていたのだろう?」
「まあね」
「それなら、都合がいい」
「で、手続きは?」
「養女の話は、一時的なもの。手続き等は、時間が掛かってしまう。今回のパーティーの間だけだ」
「なるほど」
「養女となって階層が上がっても、A階級の人間として家政婦として仕えている……で、誤魔化せる」
短時間でこれだけの設定を作り上げた父親の頭の回転の速さに、シオンは脱帽してしまう。
しかし、これによってクローリアもこの場所に居づらい思いをしなくて済むので、シオンは感謝の気持ちを表す。
その後グレイは息子を下がらせるとアムルを呼び、養女の件を話す。


