「今回のことは、旦那様も承知です」
「よ、よろしくお願いします」
「そのような言葉は、結構です。では、お早く……誰かに見られましたら、厄介ですので……」
アムルの指摘にシオンは頷くと、クローリアを連れ秘密のエレベーターを利用する。
これで統治者一族が暮らす場所へ行くことができると考えると、クローリアの心臓が張り裂けんばかりに鼓動する。
一方シオンは小声でアムルと会話を返し、無表情を浮かべ続けている。
そしてエレベーターのドアが開いた瞬間、クローリアは今まで見たことのない光景を目撃する。
「これは……」
「宇宙」
「宇宙?」
「統治者は外界の汚染を逃れる為に、この場所で暮らしている。それを知っているのは、ごく一部」
クローリアはシオンを一瞥すると、特殊ガラスに貼り付くように外の光景を眺める。
眼下に広がるのは、茶色の惑星。
この色は汚染されている証拠で、シオンを含め多くの科学者が除去に取り組んでいる。
「汚い」というのが第一印象だが、それ以上に自分が暮らしている世界が見られて嬉しかった。
「行こうか」
「何処に……」
「部屋を用意し貰っている」
「そこまで……」
「同室は、嫌だろう?」
「……はい」
「だから、用意してある」
シオンは身近にいたメイドを呼び寄せると、クローリアを用意してある部屋に用意してあるように頼む。
シオンからの命令ということで素直に従うが、クローリアの存在を不審に思うのだろう、あまりいい表情をしない。
それどころか、無意識に上から下へと視線を落とす。
「どうした?」
「い、いえ」
メイドの失礼とも取れる反応に、シオンは咳払いと共に瞬時に注意を行う。
シオンからの指摘にメイドは反射的に頭を垂れると、クローリアを連れて行く。
その姿を暫く眺めていたがシオンは踵を返すと自身の父親のもとへ向かい、クローリアを連れて来たことを伝えた。


