しかし想像しなくとも、シオンに「連れて行って下さい」と頼めば、連れて行ってくれる。
(シオン様と一緒なら……)
最初は戸惑いの方が強かったが、シオンと一緒なら大丈夫ではないかと思いはじめてくる。
クローリアは横たわっていたベッドから起き上がると、シオンの寝室の前まで行く。
立ち入ることは禁止されているので控え目にドアを叩くと、パーティーに行きたいことを告げる。
クローリアの願いに、シオンはドアを開く。そして「本当にいいのか?」と、再度聞き返してくる。
「お、お願いします」
「わかった」
「ご迷惑にならないように、頑張ります」
「だから、気張らなくていいって」
「そ、そうですが……はじめて……というより、一生行くことができない場所に行けますから……」
「心配なら、当日側にいればいい」
「は、はい」
「今日は遅いから、休むといい。俺は仕事が残っているから、それを片付けてから休むから」
「お、おやすみなさい」
緊張が続くのかオドオドとした態度で挨拶すると、シオンからの挨拶を待たずに自室へ戻ってしまう。
落ち着きのないクローリアの態度にシオンはクスっと笑うと、一緒に行ってくれると言ってくれたことに感謝する。
同時に、折角なのだから楽しんで欲しいと思うのだった。
◇◆◇◆◇◆
パーティーが開催される日、クローリアはシオンに特別なエレベーターが設置されている場所へ連れて行かれる。
このような場所があることを知らなかったクローリアは周囲を見回し、見学する。
そんな彼女の姿を遠巻きで眺めていたのはアムルで、シオンの側に行くと「あの娘ですか?」と、尋ねる。
「そう、頼む」
家政婦であるクローリア同伴は事前にシオンから説明を受けていたので、アムルは特に驚くことはしない。
いつもの冷静な態度を取り続け、淡々と対応していく。
一通り見学を終えたクローリアはアムルの近くに駆け寄ると、深々と頭を垂れ無理を言ってしまったことを謝る。


