これだけのことを言っておけば、下々の人間を騙すことができるだろう。
また、自分は統治者なので発言を疑うことはしない。
そのような考えが見え隠れするので、シオンはアークの言葉を本心として受け取ることはしない。
それどころか、冷ややかな視線を向けてしまう。
シオンの表情を横目で眺めていたアイザックは、冷ややかな視線からアークは本音を言っていないと知る。
シオンの発言は正しく、アークは食えない人物。
どうして嫌っているのか何となく理解したのだろう、アイザックもアークという人物に苦手意識を抱くのだった。
「では、その志を実現するには……」
「うん?」
「どのような方法が宜しいでしょうか」
「プロジェクト成功だ」
「それが成功しましたら、皆が喜ぶでしょう。外界に出て、本物の青空を見たいと思っています」
「今は、人工だからね」
「ただ、かなり苦労しています」
「苦労?」
その部分に引っ掛かったのか、アークが訝しげな表情を浮かべる。
一体何を苦労しているのかわからないらしく、その理由を聞いていく。
アークの反応にシオンはここぞとばかりに、どうしてプロジェクトが進まないのか話だし、資金面・技術面・それ以外の問題点を伝える。
「そ、そんなに……」
「アーク様のお声があれば……」
「……考えておく」
「有難うございます」
完全にシオンの発言に負けてしまったのか、アークは曖昧な言葉しか続けられなかった。
彼等のやり取りに、アイザックを含め他の面々達は戦々恐々とする。
流石に一触即発まではいかないがこれ以上は危険と判断したのだろう、一人の科学者が割って入る。
「そ、そろそろ……」
「そうだな」
「今日は、有難うございます」
止めとばかりに、シオンが恭しく頭を垂れる。
それについてアークは特に何かを発することなく、負けを確信したのかそそくさと立ち去ってしまう。
彼等が廊下の角を曲がったのを確認すると、シオンは口許を緩めつつアイザックに視線を向け「ストレス発散」と、言い放つ。


