愚痴は、自身の印象を悪くする。
しかし相手がシオンとなると、我慢できない。
結果、印象そっちのけでシオンについて話し出す。
勿論、話す言葉の端々に刺が見え隠れする。統治者同士の集まりに参加することなく、一体何処で何をしているのかわからない。
その割に、女達の評判がいいのだから許せない。
なまじ頭がいいから厄介で、口で戦っても負けることの方が多い。
と、周囲に多くの者がいるとわかっていながら、積年の恨みとばかりに愚痴り続ける。
聞いている方が堪らなく、シオンを含め全員が顔を引き攣らせていた。
「そういえば、髪色が一緒だ」
「そ、そうなのですか」
「シ、シオンです」
「名前も一緒だ」
「しかし、俺は……」
「確かに、そうだ。あいつが、こんな場所にいるわけがないか。どうも、あいつが絡むといけない」
「それほど、その方は……」
「何が言いたい?」
「い、いえ……」
シオンの言い方が余程気に入らなかったのか、アークが睨み付けてくる。
アークの反応に一番過敏に反応を示したのはアイザックで、発せられているオーラに気分を悪くしたのか顔色が悪い。
このままではアイザックの身に何かがあってはいけないと、シオンは別の話に切り替える。
「アーク様は、志はあるのでしょうか」
「聞きたい?」
「勿論です。統治者様のお話を聞ければ、今後の励みになりますので……できれば、宜しくお願いします」
「そこまで言うのなら」
流石というべきか、シオンの発する言葉はアークの気持ちを乗せていく。
性格を熟知しているからこそできる芸当で、アイザックはこのようなことを言うことができない。
それどころか、シオンや彼の父親以外の統治者にいい印象を抱いていないので、詭弁も無理だった。
シオンの言葉で完全に乗ったアークは、質問の内容である「志」について、話しはじめる。
アークが語る志というのは、ドームに暮らす全ての人間が平和に暮らせる世の中になってほしいというもの。
だが、最下層に目を向けない時点で、アークの志は口だけのことになる。


