下車駅から種が保存されている施設まで、徒歩五分の距離にあった。
普段彼等が働いている研究所と違い、この周辺には研究施設しかないので行き来している人の数が少ない。
また繁華街のような華々しさは感じられず、どちらかといえば重苦しい雰囲気が漂っていた。
「どの建物だ」
「話しでは……あれだ」
アイザックが指示した建物は、外観が白い三階建ての建物。
相当古い時期に建設された建物なのだろう、外観の汚れが目立つ。
シオンがその汚れを眺めていると、アイザックが「人類がドームに避難した時期からあるからじゃないか」と、シオンが欲している回答を与えた。
「なら、相当数の種が……」
「話しでは、この建物全体が管理箱のようなものらしい。昔、植物は数え切れないほどあったと聞く」
「それを使えるようになれば……」
「だから、僕達が」
「人類の未来の為に――」
「大きく出た……というか、それが目標か。何事も目的は大きい方がいいと聞くし、僕もそれで」
シオンの目標に同調するかたちでアイザックはそのように答えると、二人は並んで建物の中へ立ち入る。
建物の中は節電を呼びかけているのか、全体的に薄暗い。
意味有りげな薄暗さに二人は互いの顔を見合わすと、とんでもない場所に来てしまったのではないかと不安視する。
「人……いるのか?」
「いないわけはないが……」
「静かだぞ」
「呼ぶか」
「それしか……」
今日、来て欲しいと言われているので、不在ということは有り得ない。
今、手が離せない仕事を行っているのだろう――
と二人は自分自身に言い聞かせると、シオンは受付に置かれている機械を操作する。
しかし、反応がない。
「もう一回」
アイザックの言葉に頷くと、シオンはもう一度機械を操作する。
すると誰かが訪ねて来たことに気付いたのだろう、一人の白衣を着た男が小走りで二人のもとへ駆け寄って来る。
急いでやって来たのか、肩で呼吸を繰り返しながら「どのようなご用件ですか?」と、尋ねてくる。


