アメット


「施設運営は階級が高い者が行って、雑用は階級が低い者。となるのは、間違いないだろうね」

「今も変わらない」

「誰も、面倒なことはやりたがらない」

「楽な方に逃げていく」

「人間って、そういうものだよ」

「……まあね」

 個々の上司の言動を知っているからこそ、このような話になるとついつい愚痴が混じってしまう。

 それだけ上司に不平不満を抱いているのだが、面と向かって言えないのは階級が深く関係している。

 それならシオンが言ってしまえばいいとアイザックは言うが、シオンは頭を振る。

「仕事は忙しいが、気楽でいい」

「上に立つのは、嫌いなのか?」

「嫌いってわけじゃないけど、仲間と好き勝手にやっている方が面白い。全員が全員、アイのように付き合ってくれるとは……」

「知ったら知ったで……」

「面倒だよ」

「納得できるかも」

 シオンの正体を知ったら、多くの者が態度を一変させるだろう。

 出世の為に取り繕い、尻尾を振ってくる者もいるかもしれない。

 出世欲を持ち合わせていることは決して悪いことではないが、あからさまにそれをやられると嫌気が差し、どのように振る舞っていいかわからなくなってしまう。

 できるのなら、そのままで――

 という言葉は通じない。

「アイの出世欲は?」

「勿論、出世できるのなら出世したい。だからといって、誰かの力を使うのも……嫉妬が突き刺さる」

「で、その後も媚びを売り続ける」

「それが嫌なんだよ」

「わかる」

「付け上がる」

「納得」

 流石気が合う同士、相手が求めている言葉を瞬時に言うことができる。

 しかし愚痴を言い合うことは長くできず、楽しんでいる途中で目的の駅に到着してしまう。

 折角盛り上がっていた会話が中断してしまったことは残念だが、今日は仕事を優先しないといけないので下車する。