アメット


 多くの人間を養うには、それ相応の施設が欠かせない。

 その理由で建設されていくのが、隣接しているドーム。

 アイザックの話で、シオンは現在幾つのドームが存在しているのか数える。

 居住と研究所のドーム。

 その他に、種の保存専用と食物の栽培と養殖。

 また、生きていくうえには娯楽も欠かせない。

 これくらいの施設が揃っていると、ドームの中でも普通の生活をすることが可能だが、やはり外界へ出たいというのは本音。

 人工的に生み出された空を見るより、何処までも広がる本物の青空に勝るものはない。

 それに美味しいとされている空気を、沢山吸い込みたい。

 無意識に「美味しい空気」と呟いていたのか、横で座っているアイザックが反応を示した。

「どういう味なんだろう」

「何が?」

「空気だ」

「何の話だ」

「今、言っていただろう?」

「あっ! そうか……」

 何故、そのようなことを言ってしまったのか考えるシオンだが、自分がドームの数を数えていたことで空気の話をしてしまった――

 と、アイザックに話す。

 シオンの話にアイザックは暫く考えると「確かに便利になっている」と語り、もっと増えるのではないかと意見する。

「何が増える?」

「魚……とか」

「魚は……美味いね」

「今、施設は小規模らしい」

「魚の養殖にあたって、作物栽培と違い育てる環境を整えるのが難しい……という話を聞く」

「水質管理か」

 アイザックの指摘に、シオンは頷く。

 もっと大規模な施設を建設し養殖にあたれば、種類も増え美味しい魚を食べることができるだろう。

 しかし指摘の通り魚の養殖には水質を一定に保つ必要がある。

 また、科学力があるとはいえ人工的に行うことにも限界がある。

 だが、ひとつのことに満足すれば更に上の物を欲するのが、人間の性。

 魚の養殖に関しても上を欲するのは間違いなく、いずれ何がしらかの手を打つかもしれないと、アイザックは更に言葉を続けていった。