しかし、内心は――
そう、シオンは話す。
「やっぱり、いけ好かない」
「そうやって、面と向かって言える人物が必要なのかもしれない。逆らえない権力を持つと、人間は堕落する」
「だけど、シオンの一族は――」
「変わり者と見られている」
「変わり者と言われても、僕達にとっては正常に見える。寧ろ、権力に執着しないのは……」
「興味がないんだよ」
「なら、変わり者か」
普通、高い権力を持つとそれに執着し離そうとはしない。
だが、シオンの父親グレイはそれに執着することは殆どなく、下の者達に目を向けている。
また、プロジェクトの成功を願う。
そのような父親に育てられたからこそ、シオンはB階級と偽って科学者として働いている。
何故?
アイザックは、素直に疑問をぶつける。
「わからない」
「息子でも?」
「息子だからって、何でも知っているわけやない。父さんは、饒舌じゃないし隠し事も多い」
「でも、いい人だろう?」
「父さんは、優しいよ。優しいからこそ、科学者に手を貸してくれる。多分……俺の考えとしては、アンバードとクルツの一族を見ているかもしれない。昔も今も、同じだから……」
「反面教師か」
「そういうことかもしれない。さて、早く行こうか。向こうも待っているだろうし、待たせたら悪い」
シオンの言葉にアイザックは頷くと、共に公共の乗り物に向かう。
現在、通勤の時刻ではなかったので乗り物は空いており、二人で席に腰掛けることが可能だった。
彼等が向かう種の保存場所は多くの人間が生活しているドームではなく、隣り合った別のドームに存在する。
住居とシオン達科学者が働いている研究所が一緒となっているドームを中心に、複数のドームが点在する。
それぞれが個々の役割を持ち、生活していくなかでは欠かせない。
幸いそれぞれのドームには公共の乗り物が通っているので、特に不便と感じることはなかった。


