面白い。
最下層ではまともにテレビを観ることができなかったので、このように好きにテレビが観られることに「本当に観ていいのか?」と、クローリアは周囲に視線を走らせてしまう。
今、B階層のシオンの家政婦として上の階層に暮らしているのだが、ついつい確認してしまう。
まだ、最下層で生活をしている錯覚が続くのだろう、クローリアは自分が置かれている状況を確認し終えると、テレビ画面に食い入るように見詰める。
このような番組があったことが新鮮だったのだろう、時折可愛らしい声音を上げつつアニメの中で動く動物達に応援する。
刹那、クローリアの悲鳴が響く。
「な、何!?」
甲高い悲鳴に、シオンが自室から飛び出してくる。
反射的にクローリアの顔に視線を合わせると、何があったのか尋ねる。
シオンの質問にクローリアはキョトンっとした表情を浮かべ、特にトラブルが発生したわけではないと伝え、今アニメのテレビを観ていると話す。
「あ、ああ……」
「驚かしてしまい、すみません」
「いや、何もなければいい」
「し、静かに観ます」
「いや、楽しんでいるならそれでいいよ」
何事もなかったのならそれでいいと、シオンは自室へ戻って行こうとする。
その途中、脚を止めクローリアを一瞥する。
今、彼女はアニメ番組を観ている。
可愛らしいモノに惹かれ魅力を感じるのだろう、テレビ番組からクローリアの好みを新たにひとつ知ることとなった。
◇◆◇◆◇◆
翌日、研究所に到着と同時にアイザックからの呼び出しに会う。
何用かと身構えるシオンであったが、特に込み入った用事というわけではい。
アイザックからの要件というのは、仕事の同伴。
本来であったら違う人物と一緒にいくはずだが、シオンの方が気楽だと名指しする。
「別にいいよ」
それが、シオンの回答。
アイザック同様、シオンも気が許せる相手の方が仕事がやり易い。
そして今日、アイザックがシオンを連れて行く場所は、プロジェクトが進められている研究所とは別のエリアにある研究所で、その場所には大気が汚染される前に採取した多くの種が保存されている。


